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商品中の微生物の制御の仕方 〜商品の品質管理のために〜

2022/10/04

製品設計で一番大切と言っても過言ではない品質管理。

加工食品は作ってすぐに食べるものではないので、ある程度の日数が経っても大丈夫という保障をしなければなりません。
菌数を制御することはこの『ある程度の日数』を長くすることにつながります。

この菌数制御が、殺菌不良などでしっかりできていないと菌が増殖し容器が破裂するなんてことも発生します。
このような商品を販売してしまうと、商品回収をする必要があるだけなく、消費者の健康を害する可能性もあり大変なことにつながります。

このようなことを起こさないためには、製造工程での衛生管理(HACCPなど)や賞味期限(消費期限)の付け方など、検討するところは数多くありますが、今回は、商品中の『微生物を制御する』ことにフォーカスを当てて説明していきます。

微生物が増えるとどうなる?


「微生物」という単語を聞いたことがある人も多いと思いますが、微生物ってどんな生物なのでしょう?

「微生物」とは、一般的に「小さい生物」という意味で、寄生虫、カビ、酵母、細菌、ウイルスなど多くの種類があります。

加工食品では作ったものが腐敗しないように商品設計する必要がありますが、腐敗は微生物の1つである『菌』が増えることが原因で進んでいきます。
菌が増える=食中毒になるということではありませんが、菌数が増えることで作った時の状態ではない、違った状態(商品設計した時の味や風味と異なる)の商品になります。

商品設計がしっかりできていないため、購入した後にどんどん味の変化が起こることになり、以前と味が違うというクレームにもなります。
また、菌数が増えることで官能的にも腐敗したと認められることになります。

このようなことを起こさないためにも菌数の制御は加工食品を作る上でとても大切なことになります。

菌と食中毒の関係


菌には人にとって良い菌と悪い菌があり、すべての菌が食中毒を起こすわけではありません。
食中毒を起こす菌はどの菌か?を知ることが一番大切です。

菌によって殺菌条件や増殖条件が異なるので、加熱したから安全と思って商品化するのは大きな間違いです。
商品の条件によって、どのような食中毒菌がいるのか?それを増殖させないためにはどうしたら良いのか?をしっかり設計する必要があります。

(例)ボツリヌス菌は普通に加熱しても死滅しません。

しかも酸素がある状態だと増殖しないので普通に菌数検査しても見つからない菌なので、加熱したから大丈夫と思っていると、とんでもない事故につながる可能性があります。

法律でも、食品の水分活性が0.94を超え、かつ、pHが4.6を超えるものは、ボツリヌス菌を死滅させるため、120℃・4分相当以上の加熱殺菌(レトルト殺菌)を行うこと定められています(厚労省 食基発第0630002 号/食監発第0630004 号)。

菌数制御の方法


菌数制御の方法としては、水分活性、塩分、pH、エタノール(アルコール)濃度の設定を行います。

商品の形態によっては設定できない項目があったり、1つの条件だけで設定すると味に影響が出てくることもあるので、複数の条件で設定するなど状況に応じた対応が必要になります。

まずは、水分活性を見てみるようにしましょう。
水分活性がこの値より低ければ微生物の増殖が阻害される目安になります。


<微生物の生育最低水分活性目安>
 細菌 0.90
 酵母 0.88
 カビ 0.80
 カンピロバクター菌 0.98
 病原大腸菌 0.95
 腸炎ビブリオ菌 0.94
 サルモネラ菌 0.94
 ボツリヌス菌 0.94~0.97
 黄色ブドウ球菌 0.86


水分活性を下げる方法は、
 ①乾燥などの方法で水分を低くする
 ②塩分を上げる
この2つが主な方法になります。

塩の代わりに砂糖でも水分活性が下がりますが、同じだけ水分活性を下げようとすると、塩よりも多く入れなければなりません。

※水分活性が目標のところまで下げれない場合
 pHやアルコール濃度を上げることで制御します。
 食中毒菌は主に中性付近が増殖しやすい範囲なので、酸性にするなどして保存性を担保します。
 アルコール(エタノール)は静菌剤としても有効で、カビの制御にも効果的です。

最後に、菌数制御にはこれ以外にも様々な方法があります。
せっかく作った加工食品を安心・安全に消費者に届けるためにも、保存テストを行うなどして問題ないことをしっかり確認することを怠らないようにしましょう!

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